文系大学院を出たら就活に失敗する!? 人生終わり?
「文系で大学院進学したら、良い企業に就職できないかも」
文系の大学院を考えている方なら、誰でも一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。
そこで、今回は文系大学院からの就職について掘り下げてみましょう。
文系から大学院に進む学生はとても少ない
こちらは文系で大学院に進学する人の割合です。
文系
人文学:4.7%
社会科学:2.5%
教育学:6.0%
理系
理学:41.8%
工学:36.4%
農学:23.4%
理系に比べて、文系から大学院に進学する人は少数であることがわかります。
実際、普段の生活の中で文系院卒の人にはめったにお目にかかれません。
したがって、「文系で大学院進学したら、良い企業に就職できない」という言葉に、一度疑いの目を向けてみてもよさそうです。
「文系で大学院進学したら、良い企業に就職できない」と言われる理由
では、なぜ「文系大学院に進学したら、良い企業に就職できない」という定説があるのでしょうか。
①文系大学院には学校推薦を経由した就職が少ないから
学校推薦とは、企業から大学に寄せられた求人に対し、大学側の推薦状を添えてエントリーする制度です。
推薦状がなければ応募できませんが、自由応募型の就活よりも選考過程が簡略化され、内定を取りやすいと言われています。
そのため、大学院に進学して専門的なスキルをさらに磨き、一流企業への推薦を受ける道もあります。
「良い企業に入る」ことを考えるなら、大学院への進学は理に適っているといえます。
しかし、学校推薦の大部分は理系に偏っており、文系にはあまり見られないのです。
これが「文系の院に行っても就職につながらない」と言われる理由の1つです。
②文系は理系に比べて専門分野を活かした業種が少ないから
ここでは、大学院生のAさんを例に考えてみましょう。
Aさんは大学院でドイツ文学を専攻しており、修士2年間で大学を出て、大学で身に付けた専門性を活かした職に就きたいと考えています。
Aさんがドイツ文学の研究で身に付けた専門性は、ドイツ語、ドイツ文学の知識、作品批評力などが挙げられます。
では、この「ドイツ語」「ドイツ文学の知識」「作品批評力」を活かした職業を探すとしたら、どんな職があるでしょうか。
・「ドイツ文学の知識」と「作品批評力」に直結する職業はあまりなさそう・・・
・本に関わるなら出版社?
・「ドイツ語」のスキルを活かすなら翻訳や通訳? でもネイティブほどの語学力はないし・・・
このように考えると、Aさんの専門性を活かした仕事はかなり限定されてしまいます。
ちなみに、出版社は募集人数が少ないことが多く、そこにAさんのような人文系の学生が多数エントリーするため、高倍率になりやすいようです。
Aさんのように、人文・社会学系の研究で身に付けた専門性と直結する企業はかなり少ないのです。
専門性だけに着目した結果、就職活動がスムーズに行かず「良い企業に入れなかった」と感じる学生は少なくないでしょう。
③文系大学院にネガティブなイメージを持つ人がいるから
先ほど見たように、文系大学院を出る人は少数です。
そのため、文系大学院は傍から見たら「謎に包まれている」イメージを持っている人もいるようです。
その結果、「変わり者がオタク的な研究をしている」といったネガティブなイメージや偏見が持たれることがあります。
また、マニアックな研究の多い人文・社会学は、企業側から「そんなことを研究して社会に役立てられるのか?」と見られることもあります。
捉え方次第で業種の幅は広げられる
しかし「文系大学院に進学=就職に不利」と決めつけるにはまだ早いです。
これまでに紹介したお話は、自身の専門知識を活かした仕事が少なく、結果的に業種が限定されてしまうということに過ぎません。
とくに近年は学歴を重視せず、人物・能力重視で採用する企業が多いと言われています。
そのため、文系大学院に進学したことが直接就職を不利にするとは言えません。
先ほどのAさんの場合も、考え方ひとつで選択肢をどんどん広げていくことができます。
たとえば、
・論文の執筆で養った文章力を活かして記者やライター
・読解力を活かして教職や塾講師
といったように、様々な可能性を持っています。
文系大学院では深い知見と洞察力が得られる
少し余談ですが、文系大学院で得られる強みは、なにも就活面に限ったことではありません。
大学院では授業の内容が、学部の時とは比べ物にならないほど高度になり、自分の意見を発表する場も増えていきます。
さらに学会や研究会に参加して、教員や研究生たちの高度な研究に触れ、研究者たちと交流することができます。
このような大学院生活を通して、あたなの研究に磨きがかかってくることはもちろん、物事の考え方や知見の深さなど、あなた自身の人間性もどんどん深まっていきます。
大学で学んだことは、すぐに仕事や社会に役立てられるものばかりではありません。
高い理解力や洞察力、そして一見バラバラな知識の積み重ね等々が合わさって、職場や人間関係などの日常生活にも活きてきます。
平均年収は文系院卒がトップ!
文系院卒は年収が高いというデータがあります。
20代全体の平均年収は359万円なのに対して、文系院卒の平均年収は490万円とかなり高収入です。
これは、文系院卒の人材が外資系コンサルタントなど高収入の企業に就職する率が高いことなどが関係しているようです。
ただこれは20代のデータなので、30代以降は必ずしもトップではないようです。
30代になると理系研究職の給与は上がっていく傾向にあります。
まとめ
文系院で職場に必要なスキルをつけることは難しいのが現状です。そのため、文系院を出たこと自体が就活のアドバンテージになるとは言いづらいでしょう。
ただ、大学院での経験によって知識や能力は確実についています。したがって、捉え方次第で就職の幅を広げていくことができるのです。
大学院修了後、しばらく経ってから地位はついてきます。それに加えて、早慶の大学院や国立の大学院などハイレベルな院に進学すれば、修士過程修了後に理想の就職を果たすことは十分に可能です。
そのためにも、大学院進学を考えている人はしっかりと院試対策をして、日々の勉強を頑張ってください!