文系院試で失敗しないための事前準備と全対策18ステップ
「これから文系院試の対策に本気で取り組んでいきたい!」
そう思っていても、院試に関する情報はネット上に少なく、困っている方もいるのではないでしょうか。
そこで、院試専門の塾を立ち上げた筆者が院試対策を全18ステップに分けてご紹介します。
ぜひ参考にして、計画的に院試勉強に取り組んでください。
大学3年編
ステップ1 既習の外国語で受験できるか確認しておく
まずは、大学院入試で受験する「外国語科目」を決めることが最優先です。
特に、ロシア語やトルコ語などの、いわゆる「マイナー言語」を学んでいる場合、入試でその言語を選べず、第3外国語のフランス語などの勉強が間に合わずに苦労するケースも少なくありません。
大学院入試で選べる第2外国語としては、ドイツ語、フランス語、中国語が最も一般的です。
これに次ぐイタリア語、ロシア語、スペイン語、韓国語などを選べるかどうかは、研究科や研究室、専攻、コースによって異なります。
そのため、まずは自分が既に学んでいる「既習外国語」と「受験可能な外国語」とのマッチングを考えましょう。
「英語だけで受験できる専攻・研究室」を選ぶこともひとつの方法です。
ステップ2 研究室にいる院生の先輩にコンタクトをとってみる
高校や大学で築いた人脈を活用し、進学を希望する研究科や研究室の先輩にコンタクトを取ってみると良いでしょう。
先輩から情報が集まれば院試においてはとても有利になりますし、大学院での人間関係を構築していくこともできます。
・口述試験で何を聞かれるのか
・どのような切り口から質問されるのか
・コロナ禍を経て院試体制が変わったか
3年生のうちに先輩にアポイントを取って、これらの情報を教えてもらうと良いでしょう。
希望する研究室のウェブサイトに院生の紹介が載っていることもあるので、それを利用するのも一つの方法です。
ステップ3 希望する指導教員を決め、連絡を取ってみる
自分の研究分野と、教授の研究範囲、研究室・専攻の専門性などを照らし合わせて、どの教授のもとで学びたいかを決めましょう。
直感やインスピレーションと、研究室やコースの形式的な枠組みの両方を考慮することが重要です。
この時点で、指導を受けたい教授にメールで連絡を取っておくと良いでしょう。
自分をアピールして「覚えてもらう」ことができれば、それが院試の面接や大学院進学後に役立つこともあります。
ステップ4 英語と第二外国語の単語集を最低1冊ずつ買う
主に人文科学の研究室や専攻では、英語と第二外国語の両方の試験が課されます。
多くの大学生は院試の半年前から力を入れて勉強を始めますが、和訳や文法、講読などの勉強がある中で卒論執筆もあるため、英語と第二外国語の両方の単語を覚えきれないことが多いです。
そのため、院試の1年前には、英語と第二外国語の単語集を1冊ずつ買い、毎日目を通すようにしましょう。
できれば、院試の1年半前には、一つの外国語の単語暗記に本腰を入れ始めると良いです。
また、英語のスコア提出が義務付けられている研究室(研究科)を受験する場合、TOEFL iBTの準備を始めましょう。
TOEICでも大丈夫なところもありますが、アカデミズムで最も権威があるのはTOEFL iBTです。
ステップ5 研究計画書の作成にとりかかる
研究計画書がどの程度重視されるかは、文系の多くの研究科で「まちまち」です。
しかし、学術書1冊を読んで、院試の1年前にはA4で2枚の研究計画書の下書きを書いておくと良いでしょう。
東京大学の総合法政専攻や、早稲田大学の社会科学研究科など、社会科学系の研究科では、第二外国語が課されず「書類審査と(オンラインの)口述試験が課され、外国語の検定スコアを(任意で)提出する」という体制が採用されています。
このような研究科では研究計画書が重視され、重要度の順番は、
研究計画書≧専門科目>英語
となります。
そのため、英語だけが得意でも、内容の深い研究計画書がなければ合格は難しいでしょう。
どこかのタイミングで先輩などに添削してもらい、何度もブラッシュアップすることが重要です。
ステップ6 面接対策を始める
面接で訊かれることを想定しながら、研究メモ(面接メモ)を作成していきましょう。
研究計画書の下部に、予想される面接質問例とそれに対する答え方をメモしておくと良いでしょう。
自分の卒業研究の進捗状況と修士での研究計画を先輩や院生に話し、「それならこういう質問をされるかもね」とアドバイスをもらっていきましょう。
「提出書類を書く」→「院試で論述を書く」→「面接で話す」
という一連のステップに、一貫性を持たせることが重要です。
ステップ7 卒業論文の構成を決める
たとえ院試に合格していても、卒業論文が提出できなければ、すべてが台無しになってしまいます。
卒論は学部の集大成です。仮でも良いので、3年生の段階で大まかな構成を作っておけると、かなり余裕を持って卒論を進めることができます。
なお近年では、東大院人文社会系研究科など、かつては研究計画書のみの提出だった大学院も卒論の提出を課す傾向にあります。
院試受験生に要求される研究者としてのハードルは、高くなっているようです。
ステップ8 語学をブラッシュアップする
大学院教授が院試の外国語試験で見極めたい点は、「大学院入学後、自分一人で辞書を引きながら、研究に必要な文献を読み進めていけるか」という点です。
これに関しては、英語も第2外国語も同様です。
つまり、院試では「単純な語彙力」「単なる文法力」ではなく、「多少難しい単語や言い回しがあっても、文脈や大意を推測しながら、内容を理解できる力」が求められます。
詳しくは、〈文系院試で失敗しないための第2外国語の勉強法〉をご覧ください。
ステップ9 大学院入学後に行う研究を考えて出願先を最終決定する
指導教授の研究内容、研究室(コース)のカラー、就職に関する方針やポリシー、修士号の取得のしやすさ、大学院生たちの雰囲気なども重要な要素です。
・気さくに話し合える雰囲気
・静かで真面目な雰囲気
など、研究室や専攻によって空気感は異なります。友人や先輩と話をする際には、卒業研究や語学の話だけでなく、「雰囲気やカラー」についてもディスカッションしてみると良いでしょう。
ステップ10 院試本番の1年前から過去問を解き始める
受験する研究科の入学試験の1年前になったら、受験する外国語科目と専門科目の過去問を解き始めましょう。
この段階では2~3年分の過去問で十分です。
院試本番の筆記試験で何を書くべきか、どのように論をまとめていくかを念頭に置きながら、大学のゼミや日々の文献講読に取り組む姿勢を身につけることが重要です。
ステップ11 希望する指導教授に再度連絡し、研究室訪問をする
希望する指導教授に連絡を取り、可能であれば直接会ってみましょう。院生からオフィスアワーを聞き出して、それを活用するのも有効です。
コロナ禍以降で入試制度が変更されている可能性もあります。研究室訪問の際には、さりげなく入試制度の変更予定がないか尋ねてみましょう
ステップ12 募集要項を入手する
学部入試と違い、院試は大学からのアナウンスがない場合が多いです。大学生活にまぎれて、出願を忘れてしまう危険性もあります。
そこで、大学3年生のうちに受験する研究科の募集要項を入手し、院試日や出願締切り日を確認しておきましょう。
冊子媒体の要項を直接受け取りに行くとより刺激になりますが、難しい場合は取り寄せやWeb閲覧でも良いでしょう。
大学3年生の夏休み前であれば、受験する予定の年度より1年早い要項になると思いますが、それで全く構いません。
気持ちの上での準備も、早めに行うに越したことはないからです。
受験を決めている研究科だけでなく、「受験するかもしれない研究科」の要項も取り寄せることがコツです。
精神的に刺激を受けるためにも、できれば取り寄せではなく、キャンパスまで行って直接入手してみましょう。
大学4年編
ステップ13 大学院説明会に参加する
もし大学院説明会への参加がまだであれば、大学4年生の夏休みまでに必ず参加しておきましょう。
最近では、オンラインでの開催も増えているため、まずは受験する大学院のホームページをしっかりとチェックして情報を集め、早めに申し込みを済ませておきましょう。
著名な教授の話を聞いたり、質疑応答のコーナーに参加したりすることは、大きな刺激とモチベーションにつながります。
大学院説明会に関する情報収集は、遅くとも大学3年の3月までに済ませておきましょう。
また、受験を考えている研究科の説明会はすべて出席することをオススメします。
ステップ14 論述試験を時間内に書き切れるようにする
語学の勉強は、ギリギリまで単語を覚え込むことになると思います。
そのため、まずは論述試験(専門科目)を時間内に書き終えられるようにすることが重要です。
本番通りの制限時間で過去問に取り組み、時間内にすべての設問の論述を、自分が納得のいく形に仕上げることができるまで、繰り返し過去問演習を続けます。
設問が多い場合は、短時間で要領よくまとめることも意識しましょう。
理想的なスケジュールとしては、院試本番の半年前にはこのステップを踏み、それ以後は、論述試験で何を書くか、どう結論をまとめるかを念頭に置きながら、ゼミや文献講読をこなすことです。
ステップ15 英語(第二外国語)の単語を完璧にする
院試本番の3か月前に、英語の単語だけは覚え込みましょう。
第二外国語のほうが得意であれば、第二外国語の単語を覚え込みましょう。
単語を覚え込んだら、院試の過去問に出てくる学術的文章の文体に慣れて、すばやく的確な日本語訳を作ることに専念しましょう。
外国語科目を1つ攻略することで、精神的にも楽になり、今後の院試勉強において波に乗ることができます。
特に、外国語学専攻や外国文学専攻、芸大の大学院など、第二外国語が特に難しい研究科や専攻を受験する場合は、早いうちから第二外国語の単語を覚え込み、作文などの訓練を積んでおく必要があります。
目安として、院試の6か月前には当該外国語のB2レベルの単語を覚えきっているのが理想です。
詳しくは、〈文系院試で失敗しないための第2外国語の勉強法〉をご覧ください。
院試2ヵ月前~院試本番
ステップ16 研究計画書(+卒業論文)を仕上げ、模擬面接を行う
研究計画書のブラッシュアップを重ね、いろいろな人に見てもらいながら、修士課程の研究計画を煮詰めていきましょう。
院試に卒論の提出が課されている場合は、論文と同時並行で研究計画書を仕上げていくのがベストです。
東大、京大、阪大、一橋などトップレベルの大学院では、研究計画書と提出論文に学術上のオリジナリティや新しさを求められることもあるため、日頃からしっかりと意識して執筆しましょう。
そして書き上げた文章は、必ずその分野に詳しい人に添削してもらいましょう。
また面接対策にも力を入れましょう。面接は、研究計画書と提出論文を補完する役割があります。「自分の意欲や能力を口頭でアピールできる機会」とポジティブに捉えましょう。
ここで、面接での注意点を3つ紹介します。
①卒論の提出を課されていなくとも、踏み込んだ質問をされることもある。
国立大大学院や早慶大大学院といったハイレベルな院では、しばしば卒論について深掘りされます。
面接で「しどろもどろ」にならないよう、自分の卒論のオリジナリティをしっかりと認識しておきましょう。
②語学力や方法論について、抜き打ちでテストされることがある。
特に旧帝大レベルの人文科学系の大学院では、時代的史料をその場で読まされることもあり、一次文献をどれだけ読み込んできたかを試されます。
本来は博士課程レベルの試験ですが、旧帝大の大学院では修士課程の院試で行われることもあります。
③8月実施の院試でも、卒論提出が課される場合がある。
東大人文社会系研究科の夏院試などがこれにあたりますが、この場合はかなり早い段階で卒論を固めておく必要があります。
面接で卒論について質問されてもスムーズに答えられるよう、早めの準備をオススメします。
以上のことを踏まえ、その分野に詳しい人に模擬面接を実施してもらえば、さらに合格に近づくでしょう。
ステップ17 受験する外国語の単語を院試レベルまで完璧に覚え込む
外国語試験は「文系院試の要」です。英語と第二外国語の両方を完璧に固めましょう。
基本的には院試レベルの語彙を覚えることが最優先かつ最重要ですが、作文が課される場合は類似問題を作って解き、トレーニングを重ねておきましょう。
過去問を解き切ってしまった場合は、先輩や研究者に類似問題を作ってもらうのもよいでしょう。
国立大大学院レベルでも、受験する外国語で洋書を読み込んでおけば、語学は基本的に問題ありません。小説などが出題される場合は、文学作品を読破するのも効果的です。
重要なのは、自分の語学力と、院試で9割得点できる語学力との差を把握し、十分な量の洋書を読むことです。
院試の外国語試験にはリスニングやスピーキングがないため、読んだ洋書の量が結果に大きく影響します。
なお、外国語試験で辞書が使える場合であっても、それによって平均点が上がる可能性が高いため、決して油断はできません。
ステップ18 期限までに書類を提出し、体調管理をしっかりと
大学院入試は卒論や就活の忙しさにまぎれて、出願忘れや提出締め切りを過ぎてしまうケースもあります。
当然、少しでも遅れると受理されないため、期限の3日前までに出願・提出を済ませるようにしましょう。
また、院試前には徹夜はせず、規則正しい生活を送るなど、体調管理を徹底しましょう。
そして筆記試験の2週間前になったら、自信を持てるような勉強を多く行い、心身ともに万全の状態で臨めるようにしましょう。
あっという間に院試本番まであと半年 とにかく早めの準備を!
院試は学部入試と違い、少ない情報で戦っていかなければなりません。
また、大学院に進学する人は少数です。孤独な戦いになることも覚悟しなければなりません。
3年生はあっという間に終わってしまいます。夏院試ともなれば、4年生が始まるころには院試まであと4~5ヶ月しかありません。
だからこそ、院への進学を希望する人はできる限り早い時期からの準備が必要なのです。
スケジュール管理がしっかりできていれば、時間に余裕を持って十分な勉強ができ安心です。
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