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2024年9月7日

留学生の皆さんへ!大学院受験に向けた日本語学習 〜語彙と表現と文章理解力〜

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石明美

早稲田大学大学院文学研究科修了

担当科目:日本語



【★】日本語学習のコツ!(大学院受験向け)

 

大学院受験に向けての日本語学習…一体何をすればいいんだ?と悩んでいる人は多いと思います。なんせ、JLPTやEJUのように特定の過去問対策集もありません…。

でも安心してください。そんな時は、まず大学院受験の際に日本語を使用する場面を確認してから、それぞれ対策すれば大丈夫です。

⑴ 語学科目

 

一番日本語力が試されるのは、語学科目!留学生は基本的に、大学院入試の語学科目で【日本語】を受験する必要があります。

 

例えば、受験するコースが英文学やフランス文学など、特定の言語を使用する専門分野であれば、【日本語】と【英語】、【日本語】と【フランス語】などのように、語学科目を二つ受験する場合も出てきます。

 

いずれにせよ、語学科目は、大学院入試合格判定の最低ラインとなり、決められた点数に達しなければ落とされてしまう、とても大事な受験科目となります。

 

以下では、早稲田大学大学院(文学研究科)の過去問を参考にしながら、具体的な対策方法を紹介します。

https://www.waseda.jp/inst/admission/assets/uploads/2023/12/34_M_2024_ippan_nihongo.pdf

 

一つの文章が提示されて、文章の内容についてさまざまな問いが立てられるパターン。このようなパターンの試験問題は、日本の大学受験の【国語】科目の問題と似ていて、大きく分けて三つの部分で対策ができます。

①語彙(漢字とその読み方)

 

語彙の問題では、文章中の特定の漢字やひらがなに下線が引かれ、ひらがなにしたり、漢字にしたりすることが求められます。具体的には…

 

  • 漢字の読みを問う問題

設けている…もうけている、時折…ときおり、物乞い…ものごい

  • ひらがなの漢字を問う問題

シュッチョウ…出張、ハジめた…始めた、サイゼン…最善

 

→漢字と読み方は暗記するしかありません。そこで、効率よく覚えられるように暗記表を作成しましょう。

 

まずは、4000〜5000字の日本語の文章を見つけます。これは、主に、受験大学の過去問の文章と、自分の受験する専門分野に関連する新書から選んでください。

(大学受験や大学院受験の日本語文章は新書から引用されることが多いです)

 

そして、白紙もしくはルーズリーフを用意して、文章を一通り音読(または黙読)し、読み方がわからなかった漢字を一列に書きます。その隣には、少しスペースを空けて、母語で意味を書きます。さらにその隣に、ひらがなで読み方を書きます。

 

こうすれば、紙の両端を折ることで、漢字とひらがなそれぞれ暗記トレーニングすることができます。また、単語の意味をすぐに確認することもできます。

 

このような方法で、毎日最低一つの文章に目を通し、その中に出てくる単語の読み方&理解度を100%にすることを目指しましょう。



②日本語表現

 

日本語表現の問題では、「実際」、「まさに」、「ますます」…などの副詞、「しか」、「ような」、「がてら」…助詞(副助詞、接続助詞)などの使い方が問われます。それぞれの意味は分かっていても、いざ文章の中に出てくると混乱してしまいます。

 

→そこでまずは【副詞】、【助詞】を整理する!ここでは意味を再度確認します。

 

【副詞】動詞、形容詞、他の副詞や文全体の意味を修飾する単語。より事物の状態や性質の程度を的確に伝えることができる。

【助詞】単独で現れることはできず、必ず他の語(名詞・動詞・形容詞など)に附属する。その助詞が附属している名詞や動詞に、ある意味を付け加えたり、語と語の文法的な関係を表したりする。(主に4種類「格助詞」、「接続助詞」、「副助詞」、「終助詞」)

 

→そして、文章中の【副詞】や【助詞】を探してみる。この文章は、語彙の勉強の際に使用するもので構いません。「このように使われているんだ…」と、ぼやっと認識するだけでオッケーです。

 

ここでは、まとまりとしての日本語表現(=雰囲気?)をインプットするのが目的です。本番の時には、【副詞】や【助詞】の意味からだけでなく、それらが使われた文全体から、違和感があるかどうか、正確かどうか判断できるようになります。



③文章理解力

 

文章理解力を問う問題では、当たり前ですが文章の内容を把握する必要があります。より効率よく内容を理解するために、ここでは【接続表現】に注目することをおすすめします。【接続表現】とは、文と文の関係を示し、文章全体の流れや筆者の言いたいことを把握しやすくする機能を持ちます。

 

【接続表現】文と文の関係を示すもの。以下の7点に分けて押さえるとグッド。

①付加:主張を付加する。独立した論点を併記する。…そして、また、さらに、むしろ

②理由:理由を述べる。…なぜなら、〜からである

③例示:具体例を示す。…例えば、例を挙げると

④転換:議論の方向を転換させる。(逆説とも呼ばれる)…しかし、ところが、だが

⑤解説:前の文を後ろの文で解説する。…つまり、すなわち、要するに

⑥帰結:すでに述べた根拠から結論する。…したがって、それゆえ、よって、だから

⑦補足:議論を補う。…ただし、なお、ちなみに、もっとも

 

→問題を解く時は、【接続表現】に注意して文の関係を適宜確認する。「しかし」が出てくれば、前に述べられた内容が変わると予測でき、「例えば」が出てくれば、具体的な内容が述べられる。筆者の主張は、主に⑤と⑥の表現によって導き出されることが多い。

 

以上に挙げた3点を中心に対策を行っていきましょう。また、最初に述べたように、問題形式は大学受験の【国語】科目と似ているので、書店で販売されている大学受験【国語】のテキストや練習問題を参考にするのもオススメです。

 

⑵ 専門科目

 

次は専門科目です。ここでは、私自身の経験を共有したいと思います。

 

私は、文化人類学コースを希望していたので、専門科目では、【文化人類学】に関する基礎知識から応用問題が問われました。もちろん、すべて日本語です。

 

受験勉強では、最初は何をすればいいのかわからなかったので、とりあえず専門に関連する本を手に取っては、流し読みをしていました。文化人類学の名著(マリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』やモースの『贈与論』…)、民族誌(東南アジアやアフリカをフィールドとしたもの…)など。

 

しかし、専門分野の全体像が掴めないうえに、個々の内容についても読むのが精一杯で、「なかなか頭に入らないな…」と感じ、次は、専門分野の研究潮流やキーワードがまとめてある入門書や教科書を丸暗記してみました。

 

暗記は確かに、ある程度役に立ちます。短文記述式の問題に対しては、「この問題には、こう答えればいい」と即座に反応することができました。例えば…

 

(問)新進化主義と狩猟採集民のバンド社会について、知るところを簡潔に述べなさい。

(答)新進化主義は、文化や社会の進化が進んでいく過程を説明する理論の一つである。狩猟採集民のバンド社会は人類社会の初期段階であり、人々が小さな集団で協力し合いながら生活していた時代を指す。新進化主義では、この段階から農耕社会、都市国家へと進化していくことが指摘されている。

 

……といった具合です。

(不十分かもしれませんが大体こんな感じ。教科書通りといった印象。)

 

しかし、続いて他の問題形式…「〜についてあなたの意見を述べなさい」のように聞かれると、すぐに混乱してしまいました。(私の意見??本には書いてなかった!)

 

実際、大学院の専門科目の試験では、このような自由論述式の問題(自分の意見や考えを筋立てて述べること)が圧倒的に多いのです。以上の経験を踏まえて、ここでは、二つの対策を紹介します。



①専門分野の日本語の学説書をひたすら読む

 

これは、暗記に近いです。ただしポイントは学説書を中心に読むことです。学説書は、その専門分野における理論をまとめています。理論を説明する学説書では、接続表現がふんだんに使われた、まとまったわかりやすい日本語が使われていることが多いです。

 

知識の習得はもちろん、学術的な日本語文章(の書き方)に慣れることができます。

 

②自分の意見や感想を日本語で書き留める

 

ここでは、文章と対話することがポイントとなります。この文章は、先に挙げた専門分野の学説書や短編論文の内容を選びます。本を読み進めると同時に、「筆者の言いたいことは何?それを踏まえて、自分はどう考える?」ということを意識していきます。

 

思考は言葉にして初めてかたちを持ちます。頭の中で考えることは重要ですが、試験本番では、記述式で回答しなければならないため、面倒くさがらずに考えたことを文章に書いていきます。

 

最初はブレインストーミングのようなかたちで、思いついたことをメモ書きしてもオッケーです。重要なのは、考えたことを紙の上で、日本語で書くことです。これによって、日本語の思考力と日本語の記述力が同時に鍛えられます。試験の時に、自分の意見を聞かれても落ち着いて回答することができるでしょう。

 

専門科目の対策は、語学科目の対策にもつながってきます。

専門分野の学説書を読み込めば、学術的な日本語の語彙や表現の使い方などに慣れます。また、本を読む時に、その内容と対話することで、文章の理解度もグッと上がります。

 

そして最後に…、記述式問題は書き言葉と話し言葉の混在に注意!

「〜だ」、「〜である」、「〜だろう」というふうに統一することは常に心がけましょう。

 

ちなみに、「〜であると思う」、「〜であると考える」という言い回しは、「〜であると推測する」、「〜であると主張する」、「〜であると指摘する」に変えてみると、より学術的な表現になります◎



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