政治学の大学院入試の対策とは?慶應義塾大学院の院試の勉強法と体験談
多谷洋平
慶應義塾大学大学院法学研究科修了
担当科目:政治学
「政治学について研究したいけれど、院試ではどのような問題が出るのか分からない」と不安に思っている方も多いと思います。
ここでは、政治学の中でも日本政治思想史・日本政治外交史を例にして、院試対策の実際を紹介します。
政治学と一口に言っても、その範囲は非常に広いです。
政治思想史、政治理論、比較政治、政治史・外交史、国際政治、日本政治、行政学、公共政策、計量政治学、メディア政治論など、さまざまな分野が含まれます。
今回は慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程の入試を軸に、自分の体験や研究生活も含めて紹介します。
政治学は対象も方法も幅が広いため日本近現代に絞った
政治学の研究では、権力や国家、秩序、思想、国際社会など多様な概念や事象を扱います。
研究方法も多様で、政治思想史のようにテキストを読み込む質的研究もあれば、計量政治学のようにデータ分析を行う量的研究も存在します。
日本政治思想史や日本政治外交史では、一次史料(公文書や政治家の個人文書、メディアの言説など)を基にした質的研究が主流です。
ただし、戦後政治史の分析など、計量的手法を併用して新しい角度から実証研究を行う例もあります。
このように、政治学では方法論自体が専門分野になることもあり、研究者によって取り組み方はさまざまです。
私の場合、学部の卒業論文では第一次世界大戦後の吉野作造の言説を扱い、修士課程では戦後日本の国際法学者の安全保障論に着目して修士論文を完成させました。
英米語学を学ぶ過程で日本政治思想史・政治外交史に興味が湧いた
私はもともと外国語大学の英米語学科出身で、日本政治思想史・日本政治外交史はまったくの専門外でした。
しかし学部で外国語や諸外国について学ぶうちに、「日本人は日本のことを知らない」と感じ、日本近現代史を専門的に学びたいと思うようになりました。
そこからたどり着いたのが、日本政治思想史・日本政治外交史という政治学の一領域です。
志望大学院に向けては、まず過去問を入手しました。現在ではウェブ上で過去問を公開している大学も増えていますが、大学事務室でのみ閲覧可能な場合や、大学生協で販売される場合もあるため、志望大学院の状況を確認することが大切です。
語学と専門科目を並行して勉強しよう
語学試験対策として、私は英語に力を入れました。
大学院によっては、TOEIC・TOEFL・IELTS・英検などの民間検定で一定のスコアを取れば語学試験免除になることもあります。
院試の英語では、専門書から一部分が抜粋され、英文和訳を課されることが多いです。
そのため、自分の専門領域や関連分野の英語書籍を読むことで、語学力向上と専門知識の習得を同時に進めることができます。
私はPenguin Booksの政治思想史古典や、日本政治史の英訳版などを読み、英文和訳の練習に活用しました。
また、アメリカの情報誌Timeを読むことで、国際情勢を踏まえた英文読解力も鍛えました。
専門科目の勉強は逆算して1年間かける
専門科目の勉強は、院試本番から逆算して準備する必要があります。
私は外国語大学出身で政治学の学部教育を受けていなかったため、学部3年次の8月から約1年間かけて対策を始めました。
日本政治思想史・日本政治外交史の基礎知識を蓄える上では、中央公論新社「日本の近代」シリーズ、講談社「日本の歴史」シリーズ、岩波書店や有斐閣などの概説書が役立ちました。
岩波文庫や新書も併せて読み、幅広く知識を整理しました。
書籍を読む際は、内容を鵜呑みにせず、自分の問題関心から批判的に読み込むことが大切です。
論者によって評価が分かれる事象もあるため、自分の立場や観点からどう評価できるかを意識して読みます。
さらにアウトプット練習として、過去問を使った答案作成や模擬試験も実施しました。
時間配分や知識の不足点を把握することで、本番に備えることができます。
なお、大学院では、院試前に指導希望教員と面談して研究内容を確認することが推奨される場合があります。
しかし公平性の観点から、事前接触を禁止する大学も増えています。
私立大学は事前面談を推奨する場合が多いですが、国公立大学は公式の説明会のみでの接触を求めるケースが多いです。
志望大学院の方針を事前に大学院事務室に確認することをお勧めします。
筆記試験は日頃からアウトプットの訓練が必要
慶應義塾大学大学院政治学専攻修士課程の筆記試験は、語学試験1科目と専門科目1科目(過去は2科目)で構成されます。
語学試験(英語)の場合、大問2問で英文和訳が課されます。
両方とも解答することを意識し、時間配分を考えながらできる限り長めに訳出することが大切です。
専門科目は、複数の設問から1問を選択して解答する形式です。
私は「権威主義体制」や戦前・戦後の政党政治を例に、定義、特徴、具体例、現代的意義などを整理して解答しました。
アウトプットは一朝一夕で身につかないため、日頃から模擬試験を活用して慣れておくことが有効です。
控え用紙が配られる場合はまず解答案を作成してから清書するなど、時間配分の感覚をつかむ練習も重要です。
面接では専門性と研究の実行力が見られる
筆記試験の翌日に面接が行われ、私は指導希望教員と同じ専門分野の教授2名を含む計3名の試験官の前で受けました。スーツを着用しましたが、周囲には普段着の人もいました。ただ、ほとんどの受験生はスーツだったので、清潔感と真面目さを示す服装を心掛けました。
面接では、提出した研究計画書に沿って質問されました。
①志望理由
②入学後に行いたい研究の内容について
③卒業論文の構想について
④なぜこの大学院なのか
⑤なぜその指導教員なのか
⑥これまで読んできた本
⑦ほかの大学院は受験しているか
面接の目的は、学生が大学院で研究活動を行える専門性・方法論・実行力を備えているかを確認することです。
嘘や誇張はすぐに見抜かれるので、正直に答えることが重要です。
大学院では主体性が求められる忙しい研究生活
大学院では学部とは異なり、授業で知識を受け取るだけでなく、自分の研究を発表し、議論する機会が多いです。
ゼミ形式で進む授業では、自分の担当部分や研究内容について発表し、質問や議論を行うことが求められます。
修士課程は単位取得、就活、資格試験対策、博士課程進学準備なども並行する必要があり、非常に忙しい2年間になります。
忙しさに流されず、自分の研究を着実に進める姿勢が不可欠です。
