文系院試で失敗しないためのフランス語勉強法
植村実江
大阪大学大学院文学研究科単位取得退学
担当科目:フランス語
ひたすら書き取りで訓練したフランス語
私がフランス語の学習をはじめたのは、オーストラリアに滞在中でした。
私は語学が好きで、英語の次はフランス語を話せるようになりたいとずっと思い続けていたのですが、なかなか時間がとれませんでした。
オーストラリアで翻訳のディプロムを取得し、英語が一段落したところで、フランス語に着手しました。
始めたころは、わりと時間があったので毎日四時間くらい勉強し、三か月後にDELFA2に合格しました。
その後、三年以内に仏検準一級に合格したので、そこまでは比較的早く上達したと言えると思います。
学習法についてよく聞かれるので、自分の学習法について振り返ってみたいと思います。
まずは基本的な文法書を一通り学習し、その後はひたすらディクテをしました。
最初はフランスの出版社の教科書を使っていたのですが、ディアログの音声を全部書き取りました。
その後、NHKのフランス語ニュースをディクテしてみました。
最初は全然できませんでしたが、しばらくやっているうちに、わりと短期間で、だいたいは書き取れるようになりました。
その後は、YouTubeの動画を部分的に書き取り、自動字幕で答え合わせをしていました。
フランス語学習者が初級の段階で難しく感じることが多いリエゾンについて、私は悩んだことがないのですが、これは大量にディクテをした成果だと思います。
ディクテをしているうちに、自然と語彙力もつきました。
フランス語をはじめた頃は、自身の英語学習の経験から、自分に合っている方法をフランス語でも応用するようにしていました。
ディクテも英語学習で実践していた学習法です。
何かの本で「リスニングはどれだけやってもやり過ぎることはない」と、リスニングの重要性が強調されていたのを目にしました。
また、自分はもともと読むことが好きで、多読学習法を実践していましたが、聞き取りが苦手だったため、音声中心の学習を心掛けるようになりました。
ところが、私の場合、聞いているだけだとあまり集中できないので、書き取りをやってみました。この方法だととても集中して聞くことができ、また、何度聞いてもわからない部分を、スクリプトを見て確かめるというプロセスが楽しく、この方法が気に入りました。
フランス語は同じ発音でも文字にすると違うことが多いので、英語以上にディクテは良い訓練になると思います。
好きな勉強法を中心に時間をかけて取り組む
フランス語の文学作品もたくさん読みました。大学院に入る前に、『ノートルダム・ド・パリ』(ユゴー、)『ボヴァリー夫人』(フローベール)、『居酒屋』(ゾラ)などのフランス文学の代表的な作品をフランス語で読みました。
大学院に入ってからは、自分の研究に関係する作品以外、読む余裕はありませんでしたので、これらの文学作品を早い段階で読んでおいたことは、後々非常に役に立ちました。
ディクテも多読も自分の好きな勉強法で、好きなことをやっていただけという感じです。私は、語学の上達は、基本的には費やした時間に比例すると考えています。
好きな勉強法だと、知らない間に学習時間も増えます。
私の一番のおすすめはディクテですが、人によって最適な勉強法は様々です。
自分に合った勉強法を見つけて、時間をかけてじっくりと取り組むことをおすすめします。
一つ、好き嫌いに関係なく必要なことは文法の習得です。文法が中途半端だとある時点で頭打ちしてしまいます。早い段階で初級文法は完璧にしておきましょう。
最後に、語学を習得していると後々役に立つということをお伝えしておきます。
私は、学部とはまったく違う分野のフランス文学で大学院を受験しましたが、その時点で仏検準一級を取得していました。
英語、フランス語以外には取り柄がなかったので、語学力がなければ合格できなかったと思います。
また、博士後期課程の受験においても、フランス語・英語の試験があったのですが、その準備はさほどしなくても大丈夫だったので、もっと重要な研究計画に時間を割くことができました。
研究をしていると語学の壁にぶつかりますが、語学を習得しているとそれを早く乗り越えて、研究そのものの内容に入ることができます。
フランス語の習得は、自信につながります。
フランス語がご自身の目標達成のための武器になるように、ぜひ、フランス語の習得をめざしてください。
他大学・他分野という不利な状況での大学院受験
私の大学院受験は、他大学、他専攻、しかも大学卒業から長期間のブランクがあるという不利なものでした。
特殊なケースですが、大学院受験で新たな分野に挑戦される方の参考になれば幸いです。
私は学部が音楽大学だったので、一般的な大学の文学部というものをまったくイメージすることができませんでした。
そこで、大学院受験をめざして、まずは科目履修生として授業を受けてみました。
大学院の授業を一科目履修し、一部の大学院生と顔見知りになれただけでしたが、その後の研究室訪問などをスムーズに行うために役立ちました。
他専攻からの受験は、やはり、やる気があることを示すことが重要です。
ぜひ、研究室訪問を行い、熱意をアピールしましょう。
受験の面接ではじめて先生方とお会いするよりは、前もって顔見知りになっておいたほうが、好印象を与えることができます。
また、面接では同じようなことを質問されるので、練習にもなります。
どの時代の文章にも対応できるフランス語読解力か必要
私の場合は、英語とフランス語の試験があり、どちらもテクストを日本語に訳す問題でした。
フランス語はそれに加えて、博士前期課程での研究計画をフランス語で書くという問題がありました。
フランス語の訳出は、文学作品からの抜粋でした。
どの時代のどの作家の作品か、年によって違いますが、いずれにせよ文学作品が読める程度のフランス語力は必要です。
専門知識が問われるような難しい文章が選ばれることはありませんが、やはり各時代の文学作品に慣れておいたほうがいいでしょう。
もちろん、大学によっても違うと思われますので、過去問から傾向を見極めておく必要があります。
研究計画をフランス語で書くという問題に関しては、私はその場で考えることはできないと判断し、書くフランス語の文章を事前に準備しました。
そして、ネイティブのレッスンを受けてその文章をチェックしてもらい、それを暗記して試験に臨みました。
面接試験は志望動機や卒論の内容を中心に準備する
大学院受験の面接は、特別なことはあまりなく、聞かれそうなことは決まっていると思います。
博士前期課程の入試では、研究はこれからなので、専門知識についてはあまり問題にされないでしょう。
必ず聞かれるのは、大学院でその学問を研究する動機と、その大学を選んだ理由です。
すでに卒論をその分野で書いている人は、卒論の内容と、これからの研究のつながりについての話になるでしょう。
つまり、卒論のテーマをさらに発展させるのか、その場合どのように発展させるのか。
あるいは、テーマを変えるなら、そのテーマを選んだ理由など、答えられるように準備しておくとよいでしょう。
フランス文学研究の対象はとても幅広い
最後に、フランス文学研究について紹介します。
フランス文学というと、フランス語で書かれた、小説、詩などがまっさきに思い浮かぶでしょう。
しかし、新聞、雑誌などのジャーナリズムや、評論、映画、演劇、バレエなどフランス語に関するものは多岐に渡ります。
また、文学と他の芸術分野である音楽、美術など領域を越えた研究もさかんです。
フランス文学研究の分野は、メジャーな文学作品の研究が尊重されるというような風土はまったくなく、新しいテーマ、新しい視点なども歓迎されます。
ぜひ、自分の好きなテーマを見つけて、フランス文学研究の分野に新風を吹き込んでください。