文系院試で失敗しないための中国語勉強法

劉夏禹
ジョージワシントン大学コロンビア文理学院中国言語文化学科修了
担当科目:中国語
中国語は世界最大の話者人口を持っています。近年の中国経済の成長とあいまって、数多くの日本企業が中国に工場やオフィスを構えている一方、日中における観光などの民間の往来も依然として活発ですし、日本で暮らす中国人の数もますます増加しています。
日中文化交流から日常のコミュニケーションまで、中国語を学ぶ重要性はこれまで以上に高まってきていると言ってよいでしょう。
今回は、中国語の魅力、院試で中国語を使うメリットと中国語試験の対策を紹介します。
中国語の魅力:中国の文化をもっと楽しめる
中国は多様性を持つ国です。北京や西安のように世界遺産が多い歴史的な町もあれば、上海、広州、香港のような現代中国の活気を感じられる町もあります。
また、民族・地域により、気候、生活習慣、料理の味などは驚くほど違います。中国語が話せたら、違う視点でこの多様性を楽しむことができます。
また、中国語がわかれば、日本と中国の文化面の相違点がより深く理解できます。長い歴史をもつ中国から日本が多大な影響を受けていると同時に、歴史認識の相違など、日本とは異なる部分があります。
中国語が分かれば、中国人がどのように日本を見ているか、日中の差異をどのように認識しているかを深く知ることができます。中国語を学ぶことで、語学力が向上するだけでなく、価値観が広がり、異文化理解力が向上し、思考の幅が広い人間になれるのです。
院試を中国語で受験して合格可能性をアップさせよう
一般的に言えば、語学試験は、平均点を下回ったら不合格の可能性が高いです。英語で受験する場合、受験者の人数が多いことに加え、ほぼ全員が中学から大学までの約10年間ずっと英語を勉強し続けているため、英語能力の高い受験生が大勢います。そのため、英語試験の平均点は上がりやすいです。
しかし、中国語で受験する方は少ないため、平均点という概念があまり重要ではなくなります。非常に優秀ではなくとも、合格する可能性もあります。生存戦略として、中国語で受験することは有効なのです。
また、中国は悠久の歴史をもつ国で、アジア諸地域における思想・宗教、言語・文学、政治・経済・社会の多様な様相と複雑な歴史展開に関わっています。
中国語・中国文学研究だけではなく、アジア文化研究、仏教研究、古典日本文学研究などの分野においても、中国語の勉強は重要な役割を果たしています。
中国語で受験することにより、自分の研究内容に関わっている文献を、もっと高速で読むことができるようになります。自分の研究にとってメリットが大きいです。
読解力と専門知識を鍛えて現代中国語の院試を突破しよう
大学院の入学試験の一部である語学試験としての中国語試験は、HSKのような資格試験と違って、主に現代中国語(普通話・標準語)の文章を日本語訳にさせられます。
中国語の文章は志望専攻と関わっている論文・研究書から選ばれます。そのため、出題範囲は非常に広く、単語と文法の丸暗記で答えられるものではありません。
以下に、受験対策を3点のポイントにまとめました。
1. 日本語・古典漢文の知識を活用して漢字の面白さを楽しむ
中国語では文字表記に漢字を使用します。この点において、高校卒業までに多くの漢字と漢文を学んでいる日本人は、欧米人などに比べて、中国語を学ぶ際にかなり有利な条件を備えています。
ただし、「簡体字」であれ、「繁体字」であれ、中国で使用される漢字は、日本と字体の異なるものが多いです。中にはパッと見ただけでは気づきにくいような細かな違いもあります。これが中国語学習の難しさの一つですが、漢字の間違い探しを楽しむつもりで日本と中国の漢字の違いを観察してみるのも面白いでしょう。
試験勉強はなかなかつらいですが、漢字の面白さを意識しながら、日常生活や読書の中で、日本の漢字と中国の漢字の違いを探してみることで、中国語の単語をどんどん覚えていくことができます。
2. 専門用語を中国語で覚えることで語彙力アップにもつながる
翻訳題目の中国語原文は主に志望専攻に関わっています。例えば、文学専攻を受験すると中国語の小説を日本語訳にさせられ、アジア思想・宗教専攻を受験すると中国人研究者の論文・研究書を日本語訳にさせられます。出題範囲は広いですが、対策があります。
大学院の入学試験には、語学試験以外に専門知識の試験もあります。中には専門用語の解釈や小論文などの題目があるはずです。もちろん、日本語でこのような題目を勉強するのは効率的です。
しかし、中国語試験のために、用意された専門用語の解釈や小論文の答えを中国語に翻訳することをお勧めします。中国語に翻訳することによって、専門用語の中国語訳を暗記でき、中国語の書き言葉を学ぶことができ、中国語で文章を書く能力を向上させられます。
3. 文法構造を正確に捉えた日本語訳を作る
試験は一刻を争うものであり、難しい中国語原文を美しい日本語に翻訳するのは難しい作業です。しかし、合格水準に達するだけなら、正確に訳すことさえできれば、美しく訳す必要はありません。
そのため、試験中、過度な意訳を避け、できるだけ原文の文法構造に沿って訳文にすればよいのです。特に、小説における中国語原文では、単語の隠喩やメタファーなどの意味を考える必要はありません。文法構造に沿って正しく翻訳すれば得点できます。